昨年修習をした裁判所に二回試験の報告に行った。
エレベーターの中で,楽しそうに会話している一群は修習生なのだろう。
昨年の自分を思い出す。
執務室に通されると,かつて自分が使っていた机に,次の期の修習生が座っている。
すぐ横の応接ソファーに案内された。
裁判官と私の雰囲気や会話の内容から,私が二回試験落ちだとわかったのだろう。
部屋の中は,水を打ったように静かになった。私の声が部屋中に響く。
現役修習生のすぐ横で,とつとつと敗因や1年間の生活について語る自分。非常にシュールな光景だ。
昨年は,同じソファーの上でビールを飲みながら,明るい未来を語っていたのだが,今日の私にとって,そのソファーは針のむしろのようだった。
昨年の私は,二回試験落ちと聞くと「マジない。残念すぎる。」と思ったものだ。
きっと,この修習生達も「あー,バカが来た」と思ってるのだろう・・・。
そんなことを考えているうちに形だけの報告は終わり,暗い気分で部屋を出ようとした。
と,その時だった。
1人の修習生が私に駆け寄ってきて,「私,力になりますから何でも言って下さい!」と言って名刺を渡してくれた。
予想外だった。本当に予想外だった。
思わずうるっときた。
二回試験不合格者にとって,現役生からもたらされる情報ほど貴重なものはない。
彼女は,いい法曹になるだろうな。
私も,困った人にすっと手を差し出せるような,やさしい法曹になりたいものだ。
人の心に触れた一日だった。