受験票は,試験を受けたときのカバンの中に入れたままだった。
机の上に受験票を用意して,インターネット上で番号を確認する。
上から見ていくと,自分の番号らしきものが目に飛び込んできた。
「まさか!」
見間違いだと思った。
慌てて受験票と照らし合わせてみる。
しかし,モニターに映る薄暗い写真には,自分の番号が書かれていた。
受験票を持つ手が震える。
「間違いだよな」と自分に言い聞かせる。
試験の時は,座席番号と受験番号の2つの番号をもらう。
座席番号と受験番号を間違えているのかもしれないと思い,タイトルを確認した。
「司法修習生考試不合格者 受験番号」とある。
もう一度手元を見る。間違いなかった。
完全アウト。
写真の末尾は,「以上46人」で締めくくられていた。
2000人もいる中,自分が46人に含まれているのが,信じられなかった。信じたくなかった。
悲しみではなく,戸惑いと,驚き。
現実が,現実味を帯びていない。
何をしていいのか,わからなくなる。
喉がカラカラに渇いていた。
落ち着け。
深呼吸して,天井を見上げる。
まずは,両親に伝えなければ。
父の職場に電話するのは初めてだったが,ためらいはなかった。
しばらく待った後,電話口に父が出た。
不合格になったこと,事務所に報告に行くことを伝えた。
父は,私のただならぬ様子を感じ取ったのだろう。
今日は何もせずに,すぐに寝て休むように,
他のことは全て,一晩寝てからやるように,と話してくれた。
絶望の淵。
これから自分がどうなるのかすら,わからない。
少なくとも,多くのものを失うことだけはわかった。